駅やデパートに必ずあるエスカレーター。乗る際は通常左側に寄るが、海外に行くと右側に寄ることがある。韓国や中国などアジア圏では大方右側ルールになっている。それに慣れるまで最初まごついたが、海外で左ハンドルや右通行になる車のようにすぐ感覚的にフィットできるようになった。思えば初めて大阪に転勤したときも右側ルールだった。後々知るのだが、大阪は万博が開かれた際、世界共通マナーを謳ってどこよりも早く日本でエスカレーター右側ルールを取り入れたのだった。それが理由ではないのだが、アジアに出張した折、日本のどこが好きと現地のスタッフに尋ねると東京派と大阪派に分かれることがよくあった。大阪派の言い分は人が温かいという意見。でもそれだけではないのだろう。右側ルールのエスカレーターや大声で臆せず語る関西人に自分たちと共通点を見出しているのではないかと思ってしまうのだ。ちなみにエスカレーターの左寄りか右寄りか議論もさることながら、そのスピードの違いに衝撃を受けたことがある。確かシンガポールだったと思うが、乗ったエスカレーターの上昇下降スピードがあまりにも早く、最初手すりにつかまらないと振り落とされてしまうのではないかと驚愕した記憶がある。人が近づかないと停止しているが、いざ乗ろうとすると人を感知したのち急に動き出すのだ。それも1速から2速というギアチェンジではなく、いきなり3速から4速へ入る感じのシフトチェンジなので、こちらとしてはなんだなんだ、という驚きを隠せない。もちろん地元の人々は当たり前のごとく乗りこなすのだが、このスピードの違いはなんだろう。思うに人間の生活テンポと深く関わっているのではないか。シンガポール人の歩くスピードや生活テンポは、夕方になると毎日降りかかるスコールを避けるかのように、ハキハキとしている印象を受ける。しゃべるスピードも速い。彼らからしたらゆっくり上下運動するエスカレーターなど自分の生活テンポを邪魔するだけの厄介なものかもしれない。ん、待てよ。では東京のエスカレーターはもうちょっと早くてもいいじゃないか。うーん。そうか!高度経済成長から激しく働いてきた日本も、21世紀になって世界経済をリードする立場から少しゆったりとした足並みで上昇あるいは下降してもいいじゃないか、ということなのだろう。
と勝手な解釈をしつつ日々それなりに忙しなく過ごすのであった。
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