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手土産も心から

出張でアーティスト一行と海外に行く際、羽田ないし成田空港では搭乗開始まで時間ができると、食事を済ませ、その後は現地で公演を主催してくれるプロモーター会社のスタッフに渡す手土産を購入するのがつねとなっている。あまり時間がないときは一瞬で選ぶのだが、比較的余裕があるときは、選択肢の多さに見入ってしまい、なかなか決めきれないことがある。昔から白い恋人が、最近ではじゃがポックルが人気なのだが、加えて東京ばななだ、抹茶菓子だ、ロイズのチョコポテトだ、と選択肢が増えている。せっかく渡すものだし美味しい方がいいが、でも毎回同じものだと飽きるしなあ、と自分勝手に思案を巡らせることがあり、その時間が無駄なような、でも渡す相手の喜ぶ顔を思い浮かべながら選んでいる時間は、至福なのではとも考える。でも結局選ぶのは、自分が食べたいと思うものだったりする。

なぜかお菓子のチョイスには自身があり、そう外さないと思うのだ。でも、たまに外すこともあり、恥ずかしい思いをしたことがある。香港のプロモーター会社の社長の顔を思い浮かべながら、今回はお酒を買っていこうと勝手に決め込んで、日本酒のそこそこ高い銘柄を購入していったのだが、現地の空港に着いて手土産だよ、と渡すとあまり嬉しくなさそうな表情。あれ、日本酒ダメだったのかなあ、と一人考えていると、傍にいたスタッフが、彼はアルコールを飲まないんだ、とこそっと僕に伝えてくれた。なるほど、そうか。最初からその辺の下調べしてこなかったのだ。迂闊だった。それ以降、相手の嗜好に充分対応できるように、お土産の選択肢を複数持参することにしている。誰かは甘いもの、他の誰かはお酒やしょっぱいもの。こう考えると、手土産を渡すのもひと仕事である。

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