色んな国で色々な食べ物に出会った。心底美味かったチャイニーズ、イタリアン、コリアン、タイ料理と書き出せばきりがない。これら食した美味の一皿一皿は、記憶のどこかにしまわれているはずなのだが、どの街のどの店のなんという料理かと言われると答えに窮してしまうことがある。もしかしたら美味しい料理を食べた経験というものは、その回数が増すにつれて堆積されて、過去のものからどんどん薄れていってしまうものなのかもしれない。逆に言えば、これが意味するところは、世界中に数々のレストランや料理があれど、まずい料理を出す店はそうそうないということなのだろう。
ではお土産はどうか。出張や観光で訪れた国から帰国する際、家族や会社へのお土産を空港で買うことが多いのだが、まず購入するのはその土地の特産品だ。台湾だったら烏龍茶のティーバッグやパイナップルケーキ、中国では定番のふかひれプリッツなど。韓国では味付け海苔か瓶詰のゆず茶。タイではトムヤンクンの食材セットとか。これらは定番だけに味や中身が期待外れのことはまずない。だからこそ安心できる。でも、現地で人気のお菓子で、お土産に買って帰ったら大不評だったものがある。自分でも口にしたが、あまりにも不味く途中で吐き出してしまった。それはアジアから離れた北欧はフィンランドの首都ヘルシンキに出張で行った際にあった。仕事を終え帰国する日に寄ったホテル近くのスーパーで面出しされていたので、さぞや有名なお菓子と思って手に取り、レジの女性に、これ美味しいの?と聞いたら、とても美味しいわよ!とのことだったので、何個か購入したのだった。
帰国翌日会社のスタッフにフィンランド土産といって渡したら、誰かが食べたのだろう、不味っ!との声。人にあげるのだから自分でも味見しないと、と思い口に入れたら、得も言われぬ不味さ。これがレジの女性が美味いというサルミアッキなのか、と苦笑いしてしまった。
なんでもサルミアッキは塩化アンモニウムとリコリスでできたお菓子とのこと。見た目は黒く、食べると強い塩味とアンモニア臭がある。北欧5ヵ国では伝統的に食べられ代表的な菓子と言われるようだ。しかし他の国では「タイヤのゴムを食べているよう」とか「世界一まずいお菓子」と悪名高いようなのだ。ここまで口に合わないお菓子は、後にも先にもこれが今のところ最後なので、きっとサルミアッキは未来永劫、まずいランキングナンバーワンだと思う。こう書きながら当時の味を思い出してしまい、おえっ!
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