最近面白い話を聞くことができたので、ちょっとご紹介したい。私が関わっている大学では毎年高校生を対象としたオーディションを実施しており、そのリサーチも兼ねて昨今の高校生の音楽事情を某楽器系企業に聞くことができた。ちなみにオーディションといえば、メディア主催のものから今ではレーベル、事務所、イベンター、SNS系企業などオーガナイザーが多岐に渡っており、対象音楽ジャンルも幅広い。昔はアイドルやニューミュージックと呼ばれていたジャンルがオーディションの主流だったと記憶しているが、昨今はロック、ポップ、ヒップホップ、DJ、ダンス、果てはボカロまでかなりのジャンルを網羅している。
それだけ世の中で聴かれている音楽に幅ができたということで、好ましくはある。
そしてオーディションといえばこれまではグランプリ受賞バンドやソロシンガーに対してメジャーレーベルのデビューそして賞金が約束されていたものだ。それが、昨今では「出れんのサマソニ」に代表されるよう、レーベルや事務所との契約が結ばれなくてもステージが用意されるだけで十分な賞となっている。
まさに音楽業界の遷移に呼応するよう、CDデビューよりステージデビューの方が応募者には優先対象なのかもしれない。
さて、昨今の高校生のバンド事情である。某楽器系企業の担当者の方に聞いて驚きだったのは、日本の高校には2,000もの軽音楽系サークルが存在するようなのだが、楽器に対しての基本知識が相当なレベルで欠けているという。例えば、私が高校1年に入学祝で購入したギターは、日本のTOKAIというメーカーが販売していたストラトキャスターモデルだった。当時はストラトキャスターと言えばフェンダー社のブランドでオリジナルにはとても手が届かない背景もあって、日本の各メーカーが似た形状のギターを比較的安価で販売していたのだ。それはギブソン社のレスポール然り。
で、軽音楽サークル所属の高校生にアンケートを取ったところ、自身のギターブランドは?という問いに対して一番多かった回答が「分からない」だったという。2位がヤマハで3位がフェンダー、そして4位、5位・・と続くのだが、自分のギターブランドが分からないとはこれ如何に、である。聞けば、最近の高校生は自分の好きなバンドのギタリストやボーカルが弾いてるギターと同じ形状のものであれば、あとは色で購入を決めるという。しかも、楽器店ではなく家族と一緒に行ったショッピングモールの量販店で飾ってあるギターを選ぶというのだ。これを聞いて愕然とした。
しまいには、ギターのチューニング方法まで分からない、シングルコイルとハムバッキングの違いなどもってのほか、という。
話はそのままオーディション事情に流れたのだが、高校生にとってのオーディションはデビューとかではなく記念としての応募や参加で、プロになる気持ちは一切ないというバンドが多いのだという。
これも世の趨勢なのか、と思った。確かにバンドデビューしたところで確実にヒットが約束されているわけではない。それよりも、学生のうちに記念受験ならぬ記念オーディション参加をして、卒業後はまっとうなサラリーマンになった方がいいと思っているのかもしれない。夢はないが、その方が確かに生活面では安定はするだろう。
その話を聞いた翌日新聞に目を通すと「K-POPスターを目指す日本の若者」という特集記事があり、読めば高校を中退してK-POPスターになるため韓国に留学、寮生活を送りながら毎日歌唱、ダンスレッスンから、マナー、メンタルケアまでを習得、オーディションに勝ち抜いてデビューした日本の若者が紹介されていた。
K-POPスターになる方が今の若者にとって夢を追う価値があるのか、と考えた。
バンドよりK-POPスター。日本より韓国発海外。
いまの10代が10年後の日本の業界を変えてくれるかもしれない。
ギターの弦が上手く巻けなくてもいいや。別の意味でこれからに期待しようと思った。
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